FX取引ではエントリーをする前に必ずやらなければいけないことがあります。
FX取引の際に必ず必要なのが相場の分析をしっかりと行うことです。
しかし一口に分析と言っても、当然初心者のFXトレーダーの方々は何をすれば良いのかわからないと思います。
FX取引においてろうそく足の連続であるチャートは、ただ見つめているだけでは分析もできませんしその上達にもつながりません。
毎日チャートを見ているだけでも勉強になるということを唱える方もいらっしゃいますが、それはあくまでもチャートの分析の方法が分かっており検証をしっかりと自分でできるようになったところから始めている場合に限られます。
そのFX取引におけるチャート分析を分かりやすくするために様々なツールが開発され、我々はそれを利用して相場を分析することができます。
FX取引の初心者の皆さんがMT4・MT5を開いた時に初期設定で配置されているツールの中にフィボナッチという言葉が入っているものがあると思います。
フィボナッチ系の相場分析のツールとして代表的なものが以下の6つです。
フィボナッチ・リトレースメント
フィボナッチ・ファン
フィボナッチ・アーク
フィボナッチ・エクスパンション
フィボナッチ・チャネル
フィボナッチ・タイムゾーン
このフィボナッチ系の分析ツールはFX取引における相場分析にとても役立つ必須ツールです。
こではフィボナッチに関する説明や、実際のツールの使い方などを詳しく説明していきます。
実際の使い方については上記の6つのフィボナッチ系取引ツールの中から最もよく使われる2つであるフィボナッチリトレースメントとフィボナッチエクスパンションの使い方を説明します。
それ以外のフィボナッチファン、フィボナッチチャネル、フィボナッチアーク、フィボナッチタイムゾンについても基本的にはフィボナッチリトレースメントやフィボナッチエクスパンションの応用として作られているため基本的な作用については同じです。
フィボナッチとは何なのか
まず初心者トレーダーの皆さんはこのフィボナッチという聞きなれない言葉に少し尻込みしてしまうかもしれません。
FX取引においては普段耳にすることのないような言葉がたくさん出てきますから分からないなと思った時点でその場で調べる心がけが大切です。
では、「黄金比」という言葉ではどうでしょうか。
この黄金比という言葉の場合は、多くの人が聞き覚えのある言葉なのではないでしょうか。
フィボナッチとはこの黄金比の数列のことをさしています。
この数列はイタリアの数学者であるレオナルド・フィボナッチが13世紀に編み出したものなのです。
海や山、動物など自然界に存在するもの、絵画や建造物などの人口物、世の中に存在する美しいとされるものは全てこの黄金比が成立するという法則です。
下の画像が黄金比ね
0, 1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34, 55, 89, 144, 233, 377, 610, 987, 1597, 2584, 4181, 6765, 10946, 17711, …
一見不規則な並びに思えますが、1つの数字はその前2つの数字を足したものになっています。
1+1=2
1+2=3
2+3=5
3+5=8
5+8=13
8+13=21
13+21=34
21+34=55
34+55=89
55+89=144
89+144=233
この並びがフィボナッチ数列です。
ではなぜこのフィボナッチ数列・黄金比がFX取引と関係があるのでしょうか。
これには以下のような考え方からFX取引に採用されているという理由があります。
前述した通りただ見つめているだけでは不規則な動きに他ならないろうそく足の連続であるFX相場をフィボナッチを使うことによって規則性法則性を持たせ分析をしていこうという方法であるわけです。
相場は相場参加者の大衆心理によって形成されてると言われています。
そういう意味では人工的でもあるし自然発生的でもあるから黄金比が当てはまるのかもしれないわね
FX取引は上達するに合わせてどんどんその分析ツールは削ぎ落とされてシンプルになっていくのがよくあることですが、そのシンプルになった状態でも残っているのが移動平均線、そしてフィボナッチ系のツールです。
フィボナッチとFX取引における分析
ではこのフィボナッチはFXにおいて具体的にどのようにして使われていくのでしょうか。
ここでは少し数学の話になります。
フィボナッチ数列は隣り合った数字の比率が黄金比率である1:1.618にどんどん近づいていくという性質があります。
2÷1=2
3÷2=1.5
5÷3=1.6666…
8÷5=1.6
13÷8=1.625
21÷13=1.6153…
34÷21=1.6190…
55÷34=1.6176…
89÷55=1.6181…
144÷89=1.6179…
233÷144=1.6180…
さらに1つ置きの数字の比率は2.618に近づいていき、2つ置きの数字の比率は4.236に近づいていくという性質があります。
それをフィボナッチ比率と呼び、FX取引における相場分析ではこのフィボナッチ比率の並びを利用して分析されます。
実際にFX取引で使われるフィボナッチの数値としては23.6%、38.2%、61.8%、76.4%、100%、123.6%、138.2%、161.8%という表記がされます。
それでは実際にフィボナッチを使ったFX取引の相場分析の方法を紹介していきましょう。
フィボナッチ・リトレースメント
このフィボナッチリトレースメントはFX取引での相場分析において最も有名で最もよく使われているフィボナッチ系の分析ツールです。
リトレースメントとは引き戻しという意味や巻き戻し、後戻りというような意味があります。
つまりフィボナッチを相場に対して引き、その相場がどこまで戻ってくるかというのを差し図る目安として使うことが元々の使われ方です。
実際には引き戻しされる部分だけを計るだけでなくフィボナッチリトレースメントは様々な使い方をすることができます。
実際の使い方を見てみましょう。
例えば以下のようなチャートがあります。
左側から下落トレンドを刻んで底を着いたのではないかという局面のチャートです。
現時点で赤い矢印の地点を見ているとします。
相場が下落してきてそこをついてきたのではないかと判断している場合に、逆張りを狙ってロングでポジションを取りたいとします。
その場合相場がどこまで戻ってくるのかというようなことを差し測るのにこのフィボナッチリトレースメントを使用します。
このように下落の頂上から一番下の地点までフィボナッチリトレースメントを当てます。
フィボナッチリトレースメントを引く際には起点と終点を逆にしてしまわないようによく注意をしてください。
確かにうっかり逆に引いてしまうことがあるわね
するといくつかの線が引かれます。
この場合は一番安値の部分が0地点となるため、そこから上に向かって23.6、38.2、50.0、61.8、そして高値の部分が100%となっています。
さて、ではフィボナッチリトレースメントはこの相場分析にどのように有効に働いたでしょうか?
最安値に到達した相場は価格を上昇し始めると38.2で反応し一度大きく下落をしています。
その後に23.6で再び反応し上昇に向かいます。
38.2で再度反発し少し価格を下げた後上昇を始めます。
61.8で反応し50%のところとレンジを繰り返した後さらに上昇し100%へ到達します。
このように相場分析においてフィボナッチリトレースメントは結構な頻度でしっかりと反応します。
逆張りでロングを仕掛けた時の利確すべき反発ライン、あるいは押し目買いをする時の指標としても役に立てることができるのがわかると思います。
50%はフィボナッチ比率ではないわよね
50%はフィボナッチ比率ではありませんが、ちょうど半分の値に当たるため反応しやすくフィボナッチリトレースメントでは50%の値も表示されています。
他にも相場のいき過ぎなどを測るのにも使うことができます。
つまりトレンドの終了やトレンドの継続などを判断する材料に使うこともできます。
フィボナッチリトレースメントを戻り売りの判断材料として使うとします。
先ほどの画像をもう一度見てみましょう。
フィボナッチリトルエースメントを当てた相場の下落に対し61.8まで戻してきたところを戻り目と捉え売りを仕掛けたいとします。
つまり下落トレンドの継続を狙っているという状態です。
しかし相場は戻り目として機能しやすい61.8を超えて上に向かい始めたことでトレンド転換を始めたのだということに気づくことができます。
FX取引の相場において上昇や下落に対しフィボナッチリトレースメント38.2から61.8の間に戻しが起こることが多いと言われています。
フィボナッチリトレースメントのメリット
フィボナッチリトレースメントは非常にシンプルで分かりやすく初心者の方でも扱いやすいという点は非常に大きなメリットと言えます。
また前述の通り使い方によって利益確定のポイントを探すのに使ったり押し目買いや戻り売りのポイントを探すのに使ったりトレードの分析における様々な局面で役に立つツールとなっています。
フィボナッチリトレースメントのデメリット
フィボナッチリトレースメントは上記のようなメリットがある反面、扱いやすいがゆえのデメリットも存在します。
まず最初にデメリットとして挙げられるのは高値と安値を選択する際にどの高値と安値を選択するかという部分はフィボナッチリトレースメントを使用するトレーダーの裁量にかかっています。
つまりどの高値と安値を選択するかによって当然のことながらフィボナッチリトレースメントを使った分析結果も大きく変わってくることになります。
自分がどのトレンドに対してどのような値動きを予測したいのかということがわかっていないと正しくフィボナッチリトレースメントを引くことができないかもしれないわね
フィボナッチリトレースメントを使用する際には意識される高値と安値をきちんと選択できる分析技術も同時に必要となります。
また、その分かりやすさから数字を過信してしまうというデメリットがあります。
特に初心者のトレーダーの方には入りやすいのですが38.2あるいは61.8に到達した時点で買いや売りを入れてしまったりと安易なトレードを行ってしまいがちになります。
当然相場はそんなに単純ではないのでそれ以外の要素も同時に考える必要があるのです。
その同時に考える要素の一つが正しい高値と安値を結ぶことでもあり、あるいは他のテクニカル分析と組み合わせることであったりします。
フィボナッチ・エクスパンション
フィボナッチエクスパンションはフィボナッチリトレースメントに次いでよく使われるフィボナッチ系の分析ツールです。
フィボナッチエキスパンションはフィボナッチリトレースメントのシステムを応用して作られたものです。
フィボナッチエキスパンションは価格が今後どのように拡大していくかということを計るツールになります。
上昇トレンドであれば価格がどこまで上昇するのか下落トレンドであれば価格がどこまで下落するのかということを分析することができるのです。
つまり主に利益確定ポイントを測るのにするのが良いと言えます。
では実際の使い方を見ていきましょう。
次のような相場があります。
綺麗な上昇トレンドを描いています。
フィボナッチエクスパンションの引き方としては、上記のような上昇トレンドの場合は起点となる安値から最初の押し目にかけて山の形になるように引きます。
上記の図のようにまずは青矢印の起点となる安値にスタート地点を置き山の頂上となる高値の部分緑矢印を、最後に押し目である安値の赤い矢印部分まで引きます。
押し目から上昇した価格はフィボナッチエクスパンション100%に到達した後61.8まで下がりその後127.2%で反応し再び61.8まで下落。
その後も綺麗に反応していることが分かります。
このようにフィボナッチエクスパンションは押し目や戻り目からのその後の値動きを判断するのに優れたツールです。
この数値を目安に押し目買いでエントリーしたところから利確するポイントを目安とする場所を探していくことができます。
あるいは画像のように次の押し目を判断するのにも役立てることができます。
一番上のラインの161.8のポイントでははっきりと反発などはしていませんが綺麗に161.8を中心に長いレンジに入っています。
このようなことからフィボナッチエクスパンションも取引における相場分析で信頼できるツールとして活用できます。
フィボナッチエクスパンションのメリット
フィボナッチリトレースメントと同じく大変分かりやすいツールとなるためFX取引の初心者トレーダーの方でも気軽に使うことができます。
トレンドの起点を探せばいいだけなのでフィボナッチリトレースメントよりも場所を探すことが難易度が低いと言えます。
上記の画像のように押し目買いのエントリーポイントから利確ポイントまでを手軽に分析することができるため大きなメリットとなると言えるでしょう。
フィボナッチエクスパンションのデメリット
フィボナッチエクスパンションはあくまでトレンドの起点に使えるものであるためどの山にでも機能するわけではありません。
レンジ相場などではフィボナッチックスパンションは使うことができません。
なんとなくトレンドの起点ぽいなあという探し方ではきちんと機能しません。
誰が見ても明確な分かりやすいトレンドの起点からちエクスパンションは引く必要があります。
高値と安値がはっきりと目視できるトレンド相場が理想です。
またフィボナッチリトレースメントと同じようにチャート上に明確な線が引かれ数値が表示されるため初心者の方は過信しやすいというデメリットがあります。
フィボナッチエクスパンションも他のテクニカル指標と合わせたりあるいはフィボナッチトレースメントと合わせて使うことがおすすめです。
また数値に到達したら決済やエントリーを行うのではなくマルチタイムフレーム分析を利用して、数値の付近に着いた時はさらに下の足を確認しその中でさらにフィボナッチエクスパンションやフィボナッチリトレースメントを使用するなどしてエントリーの精度を上げる必要があります。
フィボナッチエクスパンションの効果について検証を行う場合のおすすめな方法はトレンドの起点にエクスパンションを当てて何%まで伸びることが多いのかを検証し、伸びなかったトレンドと伸びたトレンドの形を検証する方法がおすすめです。
まとめ
FX取引の初心者にも大変分かりやすく便利なフィボナッチ系の分析ツールは大変重宝しますし、一生使い続けることができます。
ですが使い方を間違ってしまうと上達の妨げになるだけでなく大切な資金を無駄に失ってしまう原因にもなりかねません。
まずフィボナッチを使う時に大切なことは数値を過信しないことです。
フィボナッチ系の分析ツールで現れる数値はまで目安であり確実に機能する魔法のツールではありません。
もちろん引いたラインでぴったりと止まることなどありませんし、小さい目線で見ればその中でも上下を繰り返しているのが相場です。
初心者のうちは水平線やフィボナッチの線などとにかく目安に価格が到達した時点でエントリーをしてしまうということをやりがちなのよね
ではどのように使うのが理想的であるのかという点ですが、フィボナッチの分析ツールを使う際は必ず他のテクニカル分析のツールや方法と組み合わせで使うことが精度を上げるためには大切です。
間違ってもフィボナッチリトレースメントやフィボナッチエクスパンションだけで判断をして取引をするということはしないようにしてください。
逆に言うとそれらだけでエントリーをすることが恐ろしくない段階である以上まだ自分は勝てることができない初心者なのであると思って良いでしょう。
まずはリアルトレードで使用するのではなく、検証をしている段階できちんと自分がフィボナッチを使いこなせているのかどうかを研究しましょう。
慣れてくると自宅でものさしを使うような感覚と同じように当たり前のツールとして相場を計れるようになるでしょう。